カトーさん探しをしていたら・・・思いもかけず、宝物を拾ってしまった。
このアイテムをどう使うかは・・・私次第・・・。
「それにしても祐巳ちゃん・・・」
「はい?」
「あのさ・・・どうしてここにいるの?てゆうか、カトーさん知らない?」
「それがですね・・・実は私も加東さんを探してたんですよね・・・途中ではぐれちゃって・・・」
祐巳ちゃんは私の隣に腰かけると、う〜ん、などと首をかしげている。
「という事は・・・祐巳ちゃんはカトーさんとここに来たんだ…」
・・・・・・・・・・ヤラレタ・・・・・・・・・・・・・。
謀られた・・・。まさかカトーさんがこんな事するなんて思ってもみなかった・・・。
「ところで・・・聖さまはどうしてここにいるんです?」
私が俯いて考え事をしていると、今度は祐巳ちゃんが不思議そうに尋ねてきた。
・・・ヤバイ・・・どう言えばいい?カトーさん家に遊びに来た…とは言えないし・・・。
「わっ、私!?私はほら、あれだよ、その…そうだ!レポート!!レポートをやりに来たんだよね!」
・・・くっ、苦しいぞ・・・私!!
「・・・レポート・・・ですか?で、そのレポートはどこにあるんです?」
しまったぁ!!!手ぶらで来たから!!
「いや…それがさ、家に忘れてきちゃって。だからカトーさんに借りてやろうと思ってたの。
ところが家に行ったらカトーさんいないから…」
「・・・へぇ・・・まぁ、何にしても加東さん探さないといけませんよね」
あぁ…駄目だ…完全に嘘だってバレてる…だって突然現れるんだもんな。
言い訳なんて考えるヒマすらなかったよ。完全に予想外だったし・・・。
とりあえず、今はペースを取り戻さないと…このままじゃマズイ。
「さて!じゃあカトーさん探し、一緒にしましょうか祐巳ちゃん」
私は立ち上がると、手を差し伸べた。
「…はいっ」
祐巳ちゃんは一瞬戸惑ってはいたが、そっと私の手を握る。
少し…温かい小さな手…私はその手をゆっくり引っ張ると祐巳ちゃんを立たせた。
祐巳ちゃんが立った拍子にトレードマークのツインテールがふわりと揺れる・・・。
噴水の水しぶきが風に流れて、祐巳ちゃんの髪や頬に水滴がかかる。
太陽の光に反射してキラキラ光る雫。その光景は、まるで一枚の絵みたいに私の目に焼きついた・・・。
私はそんな祐巳ちゃんに見惚れてた事を知られたくなくて、さっさとその場を歩き去った。
「ちょっ、聖さまぁ〜?」
祐巳ちゃんは足早に歩く私の後を小走りでついてくると、突然私の腕を掴む。
「…っ」
ドクン。と心臓が高鳴る。
「聖さま?どうかされましたか?なんだか…顔色があんまり良くないような・・・」
祐巳は聖さまの顔を覗き込むようにして尋ねる。
一体どうしたと言うのだろうか…熱射病にでもなっているのだろうか・・・?
それならば、もう少し休憩した方が良いと思うんだけど・・・。
「・・・いや・・・うん、ちょっと・・・暑いからかな・・・大丈夫だよ。祐巳ちゃんは心配しなくていいから」
・・・どうしよう・・・理性の限界かも・・・しれない・・・。
暑さと想いが比例して、自分の中でどんどん上昇していくのがわかる・・・。
「・・・・・でも・・・・・・もう少し休んでた方がいいんじゃ・・・それに・・・」
「本当に・・・大丈夫だから・・・ごめん・・・」
少し・・・離れて・・・。言葉に出来ない想いが、心の中に重くのしかかる。
掴まれた腕が、どうしようもなく熱い・・・。
私は自分の事で精一杯になっていて、祐巳ちゃんの話を最後まで聞かなかった。
「・・・・・・・・・・」
と、その時、突然祐巳ちゃんは掴んでいた腕をそっと放すと、無言で私の後についてきだした。
俯いて、ゆっくりと・・・。
祐巳ちゃんが、後ろで何を考えているのかはわからない・・・。
それでも・・・楽しそうで無い事だけは解る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・私はバカだ・・・祐巳ちゃんだって迷子で・・・きっと一人で心細かったに違いないのに・・・。
自分の事ばかり考えて、また祐巳ちゃんを傷つけてしまった・・・。
でも・・・顔を見るとまた・・・。
私は横目でチラリと祐巳ちゃんの左手を確認すると、決して顔は見ないよう右手をそっと後ろに差し出した。
「・・・・・聖・・・さま・・・?」
「手・・・つなごう・・・ごめん、心細かったんでしょ?」
そう・・・心細かった・・・突然一人になってしまって、不安だった・・・。
「・・・はい」
祐巳は、顔を上げると聖さまの右手をしっかりと握った。
冷たくて・・・大きな手・・・。
噴水の所から奥に向かって真っ直ぐに小川のように、水が流れている…それに沿って進むと湖はもう、目と鼻の先だった。
「うわぁぁっ!!キレイですね!!聖さまっ」
祐巳ちゃんは、私の手を引っ張ると勢いよく湖に向かって走り出した。
私はと言えば、祐巳ちゃんに引きずられながら全く別の事を考えていた・・・。
そう、さっきの妄想の続きを・・・。
「ねえ、聖さま!ボートですよっ!!ほら!!ボート!!可愛いですね!!!」
・・・・キタ!!ボート!!・・・
「乗りたいの?祐巳ちゃん」
「えっ!?で、でも・・・一人で乗るのはちょっと・・・それに加東さんも探さないと・・・」
祐巳ちゃんは名残惜しそうにボートを見つめ、そう呟いた。
「大丈夫だって、ボートには私も一緒に乗ってあげるから。それに…カトーさんは少々放っておいても大丈夫なんじゃない?」
「そ、そうでしょうか・・・?」
「うん。大丈夫大丈夫」
これぐらいの時間とるのも、多分計算済みだろうし・・・。
「・・・じゃあ・・・ちょっとだけ乗ってみたいです・・・」
「了解。じゃあ、行こう」
「はいっ!」
予想もしてなかった事態に陥る事がある。
いや、ある程度想像してたけど、それを遥かに上回った場合。
一体どんな対応をすればいいのか・・・。
ボスではなくても、手強いモンスターはそこら中にゴロゴロいるから・・・。