たまに、夜中に目が覚める事がある…。

大抵は雨の降ってる日で、大概は悪い夢を見たとき…。




「う…ん…夢か…」

セイは体を起こすとカーテンを少しめくり窓の外に目をやった。

「…これの所為か・・・」

外は雨・・・。ザーーーと言う音がやたらと大きく感じられる。

雨の日は大抵悪い夢を見て目を覚ましてしまう事が多い。

昔はやたらと不安になってそのまま眠れなくなっていたが、

今はユミとゆう精神安定剤のおかげでそれがなくなった。

そんな時改めてユミの存在の大きさを思い知らされる。

今では家族もかつて愛した恋人さえも彼女には敵わないだろう…。

一生手放せないな、と思う。そして一生愛していけると自信がある。

もうこの子だけだと。これで自分の恋は終わりなのだろうと…。

そう考えれば、今まで起こった数々の苦しみはきっとこの子に出逢う為の伏線だったに違いない。


セイはさっきまで見ていた夢の事なんてすっかり忘れて、隣で眠っている少女に目をやった。

疲れているのか一向に起きる気配がない・・・。

「そりゃそうか…あれだけすればねぇ…」

セイはそう呟くと、あどけない顔をして眠るユミの髪をすこしだけすくう。

しかし髪はサラサラと落ちてゆくとまた元の場所へと戻ってしまった…。

「・・・」

落ちるときに、フワリとシャンプーの甘い匂いが鼻孔をくすぐる・・・。

『…祐巳ちゃん…』

セイはうつ伏せで眠るユミの肩にそっと手をかけ、優しいキスを落とす。

するとユミの身体は眠っているにも関わらずピクンと小さく跳ねる・・・。

随分と敏感になったもんだ。

初めての時はお互い緊張していて、色気とかとは全くの無縁だった。

笑いに始まって笑いに終わった…なんだかそんな感じ…。

そんな思い出でも、今はいい思い出だ。

たまにその時の事を思い出しては二人で笑ったりするぐらいなのだから…。

セイは目を細めると、ユミの肩を背中まで人差し指で優しくなぞった。

「…っあ…ん」

ユミは小さな喘ぎ声を出すと、ゴロンとセイの方に寝返りをうった。

「…まるで誘ってるみたい…」

セイはそう呟くと、ユミの白い小さめの胸に顔を埋めた。

「暖かい…」

ユミの胸はどうしてこんなに暖かいのだろう…なんだかとても安心する。

セイはまるで子供みたいにユミの胸に顔を埋めたままそう呟いた。

「う・・・ん・・・せい・・・さまぁ・・・」

突然のユミの声にセイは思わず顔をあげたが、ユミは相変わらず寝息を立てている・・・。

何やらいい夢でも見ているらしい、とても幸せそうな寝顔だった。

セイはそんなユミを起こすまいとそっと身体を離そうとしたのだが、

いつの間にかユミの手はセイのTシャツの裾を握って放そうとしない。

「ねぇ、祐巳ちゃん…そんな事されたら、私我慢出来なくなっちゃうんだけど?」

セイの問いに、分かってるのか分かってないのかユミは嬉しそうに笑う。

そんなユミにセイまで思わずつられて笑ってしまう。

そして、セイはもう一度ユミの身体に覆いかぶさるとユミの耳元で囁いた。

「…どうなってもしらないからね?今日はもう逃がさないよ?」

するとユミはコクリと頷く。あんまりにもいいタイミングで。



ふと、ユミは胸のあたりに何か異変を感じて目を覚ました。

はて?なんだろうこの感覚・・・。頭の芯が熱くなるような…痺れるような…。

そっと目を開けて恐る恐る胸の方に視線をやる・・・。

「なっ!何やってるんですか!?」

ユミは慌てて身を捩ろうとしたが、手首を頭の上の所で掴まれていて身動きが取れない。

「あっ、おはよう、祐巳ちゃん」

「お、おはようじゃありませんよ!!何してるんですか!?」

ユミは顔を真っ赤にして抵抗しようとするが、力では全く敵わない。

「何って…えっち?」

「え、えっち!?ちょっ、ちょっと・・・あ、ん…やっ・・・あ」

ユミは必死に抵抗するが、身体に力が入らない…。

それどころかだんだん頭がボーっとしてくる・・・。



セイはそんなユミにおはようのキスをすると、そのまま首すじから胸へと舌を這わせてゆく。

「うっ、ん」

ユミはできるだけ声を出すまいと我慢するがどうやっても声が漏れてしまう。

「声出していいよ。我慢しないで・・・」

妙に艶っぽいセイの声が余計にユミを辱め、身体の芯を熱くさせていった。

胸のまわりを這っていた舌は、中心の硬くなったそれを見つけると、ぺロリと一舐めする。

その瞬間にユミの頭の中で何かがパチンと音を立ててはじけた。

「あっ、んん…せっ…さまっ・・・」

セイは抑えていた手を離すと、その手で、もう片方の胸を優しく揉みだした。

「…はっ・・・あぁ・・・」

そして次第に硬くなってゆくもう一つのそれを少し強めに摘み上げる…。

「きゃうっ」

ユミの身体はビクン、と跳ね上がり、手はシーツを強く握り締めている。

「ねぇ、気持ちいい?」

セイは少し顔を上げるとユミの頬を撫でた。もう片方の手は未だに胸を弄っている…。

力をいれたり、少し弱めたりを繰り返し繰り返し。

その度にユミはビクッビクと身体を震わせ嗚咽を漏らす。

「っう…んぁ…」

セイは手を離し、ユミの身体を抱き起こすと、大きく息をしているユミに深く口付けた。

少しづつ舌を入れ、口内を掻き回す・・・。

「…ふぁ…ッん…」

ユミもそれに答えるように舌を絡ませる。

「…んぁふ」

舌を抜き、唇を離すと糸が一筋艶めかしく光る・・・。

伏し目がちに伏せたユミの瞳はどこか潤んでいるように見える・・・。

言葉では言い尽くせない・・・。何度身体を重ねても足りない・・・。

これほどの想いを私は味わった事がない。どうすれば伝わるのだろうか。

どうすれば、こんなにも愛しいと想っている事を分かってもらえるのだろうか・・・。

セイはユミの身体を少しだけ浮かせるとその乳房に口付けた。

そしてユミを膝で立たせ、もう片方の手でショーツをゆっくり脱がせてゆく・・・。

「せ・・・さまぁ・・・わたし・・・もう・・・」

「・・・もう、何?」

セイはそう言ってギリギリまで焦らす。セイももうすでに我慢できない所まできている・・・。

ユミはそんなセイの頭を抱きかかえるようにして、小さく呟いた。

「…我慢…できない…」

きっと今ユミの顔は真っ赤だろう・・・

ユミのその一言にセイは顔を上げると、もう一度口付けて、そしてベッドに押し倒した。

ユミの秘密の場所はすでに水音を立てるほど濡れていた・・・。

セイは胸から下腹部、そして足の付け根へと舌を這わせてゆく・・・。

「や・・・っあ・・・」

そしてそのままユミの一番敏感な所を舌先で刺激する・・・。

頭が真っ白になって、身体がどうしようもなく熱くなる・・・。

セイはそんなユミを見て更に力を込め次から次へと流れてくるユミの愛液を舐めとってゆく。

その度にユミの身体はビクンビクンと跳ね、今にも壊れてしまいそうだ。

そしてついに、セイが一番敏感な所を軽く噛んだその時、

「っう・・・っあぁ・・・っはぁ・・・あっ・・・あぁぁあぁぁぁ!!!」

高みへと上らされたユミはグッタリとセイに身体を預けた・・・。

セイはそんなユミの身体を受け止めると、優しく抱きしめる。

セイの顔からは余裕が消えて、切なげな目でユミを見つめていた・・・。

いつもそうだ。セイはいつも事が終わるとこんな顔をする・・・。

泣き出してしまいそうな、そんな顔・・・。

何を考えているのか・・・どう思っているのか・・・。

いつも聞きたくても聞けない・・・。なんだか聞いてはいけないような気がして・・・。

そのときだ。突然セイはユミを抱いていた腕に力を込めた。

「祐巳ちゃん…好きだよ…誰よりも好き…だからお願い…私を離さないで・・・ずっと傍に置いていて…」

セイの声は掠れて、今にも雨の音にかき消されてしまいそうなほど小さい。

ユミはそっとセイの首に腕を回すと、おでこに優しいキスを一つ落とし、言った。

「離しませんよ。ずっと傍にいます…。そして一緒に歳をとりましょう・・・」

「・・・うん」

泣き出してしまいそうなセイの小さな返事に、ユミはクスリと笑って続けた。

「なんだったらお墓も一緒に入りますか?」

ユミの答えにセイは一瞬目を丸くしたが、やがて、フッと笑った。

「・・・お墓?」

「えぇ。お墓です。死んでしまってもずっと一緒にいたいじゃないですか」

「・・・ふふ。そうだね、じゃあどっちに入る?佐藤家?それとも福沢家?」

セイは冗談で言ったつもりなのにユミは何やら真剣に考え込んでいる。

そして、そうだ!と手を打つとにっこり笑った。

「どこかの国では女の子同士でも結婚できるって聞いた事あるんですけど・・・何処か知ってます?」

突然のユミの質問にセイはまだぼんやりしている頭をフル回転させた。

「へ?え、ええと、スイスだったかな・・・確かそこらへんだったと思うけど?」

「そうですか!じゃあスイスに行って結婚してしまえばいいんですよ。

そうすれば二人だけでお墓に入れるでしょ?」

ユミは名案だ!とばかりに喜んでいる。しかしセイは顔をほんの少し赤らめた・・・。

「・・・祐巳ちゃん…それって、プロポーズ?」

セイのポツリと言った一言にユミはハッと顔を上げてセイの瞳を見つめた。

「えっ?やっ、あの!!ちがっ、別にそんな大それたものではなくて!!」

慌ててユミは両手を振ると恥ずかしそうにセイの胸に顔を埋めた。

「えー?違うの?プロポーズじゃないの?今私すごく嬉しかったんだけどなぁ。

いや、悔しい・・かな。先越されちゃったよ。私からいつか言おうと思ってたのに。」

セイはそう言ってユミの顔をグイっと持ち上げた。

セイの意地悪な微笑みにユミは恥ずかしそうに両手で顔を押さえると、もう!

とふくれてそっぽ向いてしまった。

「…ありがとう…」

セイはそっぽ向いてしまったユミを後ろから抱きしめ、そう呟くとそのままベッドに倒れこんだ。

「・・・私だって同じ気持ちなんですからね!・・・よく覚えておいてください・・・」

ユミはそう言うとセイの方に振り返り目を瞑った。それがキスして、の合図だとセイは知っている・・・。

優しく、口付けて、セイはポツリと呟いた。

「…誓いのキスだね・・・」


雨の音が心地よいウエディングソングに聞こえた夜。

いつまでもこの幸せが続くようにと願った・・・。






病める時も健やかなる時も、


その愛を誓いますか?


死が二人を別つまでその愛を誓えますか?


いいえ、もし死が二人を別れさせても、この愛は永遠だと誓います。

ジューン・ブライド