あなたのことが、好きなんです。


本当に好きなんです。


どうしようもないくらいの私の気持ち、


どうすればあなたに届きますか?




その夜、セイは熱を出した。多分、ユミにジャケットを貸した所為だろう。

ユミはセイのおでこに当てたタオルを変えながら、優しく髪を撫でた。

「ごめんね、祐巳ちゃん・・・最後の夜なのにこんな・・・」

セイはハァと小さくため息を落とし、髪を撫でるユミの手を握る。

きっとユミは自分に責任を感じているに違いない・・・でも、これはユミのせいなんかでは全くない。

しいていえば自業自得な訳で、何もユミが責任を感じる事など何も無いのだ。

セイはしょんぼりと落ち込んでいるユミの手のひらに頬擦りして、言った。

「祐巳ちゃんのせいじゃないからね?私が・・・悪いんだからね?勘違いしないで」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

セイの熱は大したことはない。だけど微熱というほど低くも無い・・・。

ただ、その微妙な体温が一番辛いのもよく知っているユミは、優しくそう言ってくれるセイの手を握りかえした。

いくら責任を感じるな、といわれても、そういう訳にはいかないのがユミだ。

きっとセイはそれもよく知っているだろう・・・だからわざわざそんな風に言ったんだと思う。

さりげない優しさがこんな時は一番堪える・・・ユミの瞳には、うっすらと涙がうかんでいた。

「な、泣かないで、お願いだから」

「う・・・だ、だって・・・聖さま・・・辛いでしょう?」

ユミはセイのおでこに触れ、自分のおでこと比べてみる・・・まセイのおでこはだ少し熱い。

それでもさっきよりは大分良くなったみたいだった。

「大丈夫だよ。そんなにしんどくはないし・・・祐巳ちゃんもそろそろお布団に入って・・・明日で最後だよ?

ちゃんと寝とかなきゃ、ね?」

「で、でもっ!タオルとかっ」

変えなきゃ・・・そう言おうとしたユミの唇を、セイの人差し指が塞いだ。

熱のせいだろうか・・・微かにセイの瞳が潤んでいるように見える。

「大丈夫だから。本当に。約束する。だから祐巳ちゃんもそろそろ休んで」

セイはそう言って強引にユミの腕を引っ張り、自分の隣に押し込みユミが逃げられないようギュっと抱きかかえる。

「せ、聖さま!?」

「あー・・・祐巳ちゃん冷たくて気持ちいい・・・」

セイはポツリと呟いた。すべすべの手触りにちょうどいい柔らかさに温度・・・セイはゆっくり瞳を閉じた。

するとどうだろう・・・それまでは苦しかったはずの体が、フワフワと宙に浮くような感覚に襲われる。

そして・・・ピンク色と白色の虹がかかったかと思うと・・・その向こうでユミが手を振っていた・・・。

「・・・・・・・・・聖さま・・・?」

スースー・・・微かに聞こえてくるセイの寝息は、いつになく規則正しい。

ユミを抱きしめてから一分も経っていない・・・それなのにセイはすでに眠りの世界へと落ちてしまっていた。

ユミは背中から抱きしめられるような形をしていたが、どうにか体を回転させると、

セイの鎖骨のあたりにおでこを当てる。そして、ユミもそっと・・・瞳を閉じた。




翌朝・・・セイは珍しく目覚ましよりも先に目が覚めた。

隣ではまだユミが寝息をたてている。

何かいい夢でも見ているのだろう、ヘニャ、と情けない笑みを浮かべているものだから噴出してしまいそうになり、

セイは慌てて口元を押さえた。

そしてユミのおでこにペタリと手をあて、自分のおでこと比べてみる。

「よし!全快!」

セイはユミを起こさないよう布団から出ると、一応体温計で熱を測ってみた。

するとやはり熱は平熱に戻っている。それになんだか体が異様に軽い。

昨日まではあんなにも重かったのに・・・セイはチラリとユミを見た。

昨夜、ユミを抱きしめた所までは覚えているが、それ以来記憶はプッツリと途絶えた・・・。

多分速攻で眠りに落ちたのだろう。何か夢を見たような気もするけれど・・・全く思い出せない。

ただ・・・とても気持ちよい何かにくるまっているような感覚だけが、今も体に残っていた・・・。

セイはユミを起こし、もう大丈夫だと伝えるとユミは飛び上がって喜んだ。

「良かったですね!でも・・・今日は大事をとってお昼までお休みしてましょうね?」

一応・・・もう少し様子を見た方がいい。きっとセイが逆の立場でもユミにそう言っただろう。

ユミは嫌そうな顔をするセイに、どうにか言い聞かせると、二人は仲良く朝食に向かった。


今回の旅行は今日でおしまい。寂しい?と聞くセイに、ユミは複雑な顔をした。

夜にはまたセイの嫌いなフェリーに乗って、明日の昼過ぎには家につくだろう。

物悲しいような気もするけれど、自分達は同じ家に帰るのだから以前ほどの寂しさはない。

帰りはフェリーの時間が長いから嫌だ!とセイは言っていたけれど、そんなセイを見るのもどこか新鮮で、

セイには悪いがユミは楽しかった。今回の旅行で得たものは多い。

セイはお化けが嫌い。ユミはお姉さまととてもよく気が合う・・・その他にも沢山思い出が出来た。

寂しいというよりも、とても実りの多い旅行だったような気がする。

未来へのプレゼントや、将来の予行練習・・・細後の最後にセイは熱を出してしまったけれど、

それはそれでいい思い出だ。

ユミとは裏腹にセイは最後に熱を出したのが相当くやしかったらしく、

チェックアウトするその瞬間までブーブー言っていた。

「でもほんと・・・熱で良かった・・・」

「?何がです?」

ユミは突然セイがそんな事を言い出すものだから、思わず飲んでいたお茶を吹きそうになった。

するとそんなユミにセイはハンカチでユミの口を何も言わず拭いてくれる。

「だって、本気で嫌な雰囲気がしたのよ。だからてっきりお化けの類かと・・・」

何ともいえない寒い感じを思い出して、セイはブルリと体を震わせる。

「聖さま・・・本気で言ってます?」

「あたりまえじゃない。私、お化けは信じてないんだけど・・・でも、もし居たらと思うと・・・」

うぁぁぁ、と頭を抱えるセイ。それに対してユミはただ沈黙するしかなかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

信じてるじゃない・・・思いっきり・・・。

ユミは思わずポロリと出てしまいそうになる言葉をグっと飲み込む。

多分怖いから目を背けたいのだろうが、明らかに幽霊から目を背けられていないセイに、

ユミはもうただ笑うしかなかった。

「まぁ・・・良かったですね、お化けじゃなくて」

「本当よ!!ただの知恵熱で良かった」

セイはホッと胸を撫で下ろし、ユミの荷物を持つ。先にフェリー乗り場に行って荷物だけ預けておこうと思ったのだ。




「ほら祐巳ちゃん、こっちこっち!」

セイは嬉しそうにユミの手を引き、丘の頂上を目指した。

お土産屋さんや、郷土料理をしっかり堪能してどうにか夕方まで時間を潰した二人は、

旅の最後に気球に乗ることにしたのだ。

昨日、丘の上に浮いていた丸いモノは、今日もまた夕日を背負って真っ赤に燃えている。


それはそうと、これは随分後から知った話なのだがセイ曰く、本当は飛行機や船、もちろん気球も、

本当は苦手なんだそうな。そしてお化けの類も似たような意味で苦手らしい。

そしてセイはこうも言った。

『理屈はわかるけれど、あんなもので浮かんだり飛んだり出来る訳がないじゃない。

そもそも自分でコントロール出来ないのが何よりも一番怖い。

お化けに至っては見えないのに存在してるっていうのがどうにも・・・ね。

見たことが無いから怖いのかもしれないけど・・・出来れば一生見たくないわ・・・』

と。

つまり、自分で確認できないものほど怖いものは無い、ということなのだろう。

結局セイは自分しか信用していないのだ。

でも、だからと言ってむやみに飛行機やジェット機なんかを操縦されても困るのだが。

そんなセイにユミは苦笑いをしながら、上手く丸め込んで無事飛行機に乗ることが出来たのはまた別のお話。


話は戻って、小高い丘の頂上にそれはあった。

大きな気球の周りを小さな気球が五つ鎮座している。

係員の人に聞くと、沢山の人たち用とカップル、もしくは少人数用に分かれているのだとか。

セイとユミは二人。もちろん他に誰も人は居ない。という事はもちろん小さい方の気球ということになる。

セイは一瞬引きつった笑顔を見せたけれど、すぐににっこりとユミに笑いかけてくれた。

係りの人に詳しい説明と注意事項をしっかりと聞き、ようやく気球に乗り込む。

しばらくすると、頭の辺りがゴウゴウと凄い勢いの炎が飛び出し、それまで小さく萎んでいた気球が膨らみ始めた。

だんだん大きくなる気球と共に、二人の胸も期待がどんどん膨らんでゆく。

いや、セイの場合は不安だったのかもしれないのだけれど・・・。

やがて五センチ・・・十センチ・・・と地面から離れて、あっという間に係員の人が離れてゆく。

「浮きましたよっ!聖さま、ほら、見てください!!」

ユミは興奮のあまりセイの袖を引っ張りおもむろに下を覗き込む。

地上で係員の人がこちらに向かって手を振っているのが見えたユミは、大きく手を振り返しセイの方を振り返った。

「だ。大丈夫ですか?聖さま・・・」

普段と何の変わりも無いように見えるセイの横顔・・・でも、少し緊張してるように見える。

「う、うん。大丈夫。それよりもほら、気球は下ばっかり見るものじゃないと思うよ?」

セイはユミの手をとり下ばかり見ているユミにそう言って、正面を指差した。

太陽が真正面に浮かんで、雲を紅く染める・・・。

鳥たち家に帰るのだろう・・・群れになって太陽めがけて一直線に飛んでゆくのが見えた。

「こうしてみると、空は広いね」

セイはそう言って目を細める。ユミもまた言葉を失ったようにただコクリと頷いた。

「この景色・・・一緒に見たのが祐巳ちゃんで良かった」

「・・・私も・・・今隣に居るのが聖さまで良かった・・・」

セイのポツリと言った言葉が、胸の中に雫になって落ちて拡がる。

今日、ここに来て良かった・・・セイと来れて良かった・・・。

「景色ってさ、一緒に見る人も重要だよね。誰と見るかでその景色もいろいろと変わって見えるから」

セイはそう言ってみっこりと微笑む。

感情がそうさせるのか、それとも脳がそうさせるのかはわからないけれど、

ユミと居るだけで見慣れた夕日もいつもとは違う。新しく生まれる明日のための太陽の素晴らしさを知る事が出来る。

こんな風に思えるのは・・・きっとユミと居るときだけだろう・・・。

切ないようなやりきれないような感情の中に、憂いとか、暖かさを感じられるのは・・・きっとユミだからだ。

「そうですね・・・夕日がこんなにも綺麗に見えるのは・・・聖さまと見てるから、なんでしょうね」

ユミはセイの言葉に相槌を打って、ふとセイを見上げてハッと息を呑んだ。

それは突然やってきて、不意に心を奪ってゆく。

「っ!!」

ユミはそれに気づいて慌ててセイから顔を逸らしたけれど、もう遅かった・・・。

好きで好きで、しょうがないはずなのに、なんなのだろう、この胸の奥から湧き上がる衝動は。

いつも見ているセイの顔・・・それなのに突然知らない人みたいに見えて・・・そしてまたドクンと胸を打つこの感覚。

同じ人に何度も何度も恋をするような、奇妙な感覚。全身から力が抜けてゆく・・・。

見てはいけない。解っているのに・・・振り向かないで・・・そう思っているのに・・・。

「どうかした?祐巳ちゃん」

「・・・・・・・・・・・・っな、なんでも・・・無いです」

優しい笑顔に、声・・・それらの全てがユミの何かを激しく揺さぶる。

熱い・・・身体が・・・。声にならない声が、まるで助けを求めるみたいに叫んでいる。

「せ・・・さま・・・」

もう・・・我慢できない。そう思った。抑えきれない衝動というものがあるなら、きっとこういうのを言うのだろう。

「何?」

ユミの様子が何かおかしい。夕日のせいもあるのかもしれないけれど、どこか熱っぽい瞳でこちらを見上げている。

こんな時、セイはいつも迷う。本当は全て奪ってしまいたいのだけれど、そうしたい自分と理性がいつも戦う。

胸が熱くて、焦がれるような気持ち。とっくに忘れたと思っていた感情が、また目を覚ます。

心に爪を立てるようなユミの瞳。どこまでも食い込んで、きっともう後戻りは出来ない。

セイは何も言わないユミに、もう一度ゆっくりと聞き帰した。

・・・本当はその答えを知っているくせに・・・。

「どうしたの?大丈夫?祐巳ちゃん」

泣き出しそうな苦しそうなユミの顔。察してよ!とでも言いたげに歪む。

「わたしっ・・・せい・・・さま・・・」

きっとセイは解ってる。ただ、その答えを知っているのに動こうとしないのは、セイがとても慎重だから。

むやみに手を出して壊してしまうかもしれないと、今でも・・・きっと思ってる。

だから、ではないけれどユミは意を決したようにまっすぐセイの瞳を見つめた。

「聖さま・・・キス・・・して・・・。いつもみたいのじゃなくて・・・もっと・・・深いのを・・・」

「・・・・・・・・・祐巳ちゃん・・・・・・・・・・・」

何かが弾けた。頭の中が真っ赤に染まる・・・。

セイは決して強くない。だからユミを迷わずに愛する事なんて出来ない。

だからどうしたって決心が揺らいだり、向かうべき方向を見失う事だってある・・・。

だからこんな時に思う。強さが欲しい。いつだってまっすぐなユミを受け止めるだけの強さが・・・欲しい。

セイはギュっと握りこぶしを作ると、ユミの頬にてを添えた。

そしてゆっくりと・・・確実にユミの唇を奪う。軽く開いたユミの歯列に、出来るだけ優しく舌を入れる。

「ん・・・っふ・・・」

ユミから甘い声が漏れる・・・そして、口びるが、必死でセイに応えようとしてくれた。

セイは伏せた瞳でユミの震える睫毛を、ただじっと見つめていた・・・。



「ねえ、祐巳ちゃん。私、こんなに誰かを好きになった事なんて、無かったの」

突然セイがそんな事を言い始めた。

優しく微笑みながらそんな事を言うセイに、ユミはただ黙って頷く。

「だからね、きっと間違った愛し方する事もきっとあると思う。

もしもそれが祐巳ちゃんの重荷になるようなら・・・祐巳ちゃんは迷う事なく私の手を離していいからね」

セイはただそう言って、ふふ、と微笑み沈んでゆく太陽を、名残惜しそうに見つめていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ユミは何も言う事が出来なくて、気の利いたセリフも出てこなくて、結局セイの手を握る事しか出来なかった。

でも、セイはやっぱり何も言わないで、ユミの手を強く、強く握り返しただけで・・・。

ゆっくりとゆっくりと地面が近づいてくる。




空の旅は一瞬だったけれど、間違いなく何か新しい大切なモノを手に入れた気がした。





重荷にはなりたくない。


キミの歩みを止めてしまうような事はしたくない。


だから、もしもそんな時が来た日には、


キミは私を置いてって。


必ず私は、キミに追いつくと誓うから。











































おまけ。

セイは家につくなり大きく伸びをする。

ついでに凝り固まった体を左右に振りバキバキと鳴らした。

「いや〜やっぱり家はいいね〜」

「そんな事言って・・・つい昨日まではもう一泊しよう、とか言ってたくせに」

ユミは満面の笑みでソファにゴロリと転がるセイを一睨みする。

「だってさ、私最終日熱出しちゃったじゃない?

それに途中にはお姉さままで合流するし・・・なんだかなぁって思ったんだもん」

ふーんだ!とそっぽを向くセイに、ユミはクスリと笑う。

子供みたいに無邪気かと思えば、歳相応にしっかりしているセイ。

一体どちらが本当のセイなのだろうか・・・いや、どちらもセイなのだろう、きっと。

クスクスと笑うユミに、セイは不機嫌な顔をしていたけれど、やがて何かを思い出したようにズイっとユミに近寄ってきた。

「そういえば祐巳ちゃん・・・あの時お姉さまと何話してたの?」

そう、あの時お姉さまは確かにユミの耳元で何か言ったのだけれど、ユミはそれを決して教えてはくれなかった。

「ああ、あれですか。あれはですね、お姉さまの携帯の番号とメールアドレスを教えてもらったんですよ、ほら」

ユミはそう言ってセイに一枚の綺麗に折りたたんだ紙切れを手渡した。

「えっ!?何それ??私番号は知ってるけどメールアドレスは教えてもらってない!!」

「・・・そりゃそうでしょうねぇ・・・」

ユミは苦笑いしながらポツリとそう呟いた。

「・・・どういう意味?」

「いえ、見ればわかりますよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

何だろう、何かとても不吉な予感がする。セイはユミの手から紙を受け取り、ガサガサと開く。

そしてメールアドレスの書かれたところに視線を落とし、声に出して読んでみた。

「えっと・・・p・r・e・t・t・yーS・E・I・T・A・N・・・・・・・・・何これっ!?」

セイは手のひらからヒラリと紙を床に落とし、その場に立ち尽くす。

・・・PrettySEITAN・・・

・・・ぷりてぃーせいたん・・・

・・・プリティー聖たん・・・

「あははははは!!ね?聖さまには言えないでしょう??」

「聖たんて・・・よりによって聖たんてーーーーっっ!!!!!」

セイはその紙を力一杯引っ張ると、ビリビリに破いた。そして、そのままゴミ箱に放り投げた。

「あーっ!!なにするんですかっ!!聖たんのばかーっ!!」

「ゆっ、祐巳ちゃんまでっっ!?」

セイはガックリと頭を垂れて、ションボリとしながらソファに横たわる。

「・・・冗談ですよ、聖さま。ふ、ふふふ・・・面白い方ですね?凄く聖さまの事好きなんですよ、きっと」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

笑顔でそんな風に言ってくれるユミ。でも、セイは心の中で思っていた。

・・・知ってるよ・・・。

と。

そしてセイは、ユミをグイっと引き寄せ無理矢理にその唇をふさぐ。

「・・・ただいま、祐巳ちゃん・・・明日からもよろしくね」

すると、そんなセイにユミは一瞬目を丸くしたけれど、やがてにっこりと微笑んだ。

「こちらこそ・・・よろしくお願いします。聖たん」

ユミが少し意地悪な顔をしてそう呟くと、セイはクッションを顔にかぶせ、力の限り叫んだ。




「お願いだから、その呼び方はやめてぇぇぇぇっっっ!!!!」

・・・と。






帰ってくる場所が私にはある。


キミも同じ所へ帰る。


そんな幸せ。


毎日毎日続いてゆく・・・幸せな日々は、


これからもずっと、二人で。







幸せな日々   第十四話