思いがけず知り合いに会った。


話してる間中、思ってた。


キミを会わせたい・・・私の愛したキミを。


私の愛したキミだからこそ・・・。







「ほんとはね・・・今日ずっとこうしたかった・・・」

セイはユミを抱きしめると、その細い首筋に顔をうずめた。

こうしているとどうしてかはわからないけれど、泣き出しそうになってくる。

ほんの一年前・・・こんな気持ちに自分がなるだなんて思ってもみなかった・・・。

沢山ある恋愛小説を片っ端から読み漁った時期もあった・・・そう、あれは高校二年生の時。

あの時、本に書いてあった気持ちを理解する事が出来なくて、シオリとの付き合い方も解らなくて・・・。

だから・・・という訳ではないけれど、もう二度と繋ぐ事のない場所へ行ってしまった、昔の恋人。

今でも切なく胸を刺す事はあっても、帰りたいとは思わない。

キスしたい、だとか抱きしめたい・・・だとか・・・ただ愛しい気持ちだけが残るような出逢いはきっと、

後にも先にもユミしか居ないだろうから・・・。

セイはユミの首筋から香る甘い香りにスンと鼻を鳴らすと、そのままゆっくりとユミを畳の上に横たえた。

「ん・・・・」

ユミはセイの首い腕を回すと、くすぐったいような痺れるような感覚に思わず声を漏らす。

もうこうして何度セイと抱き合ってきただろうか・・・。

何度抱き合っても慣れない・・・それどころか、ますます身体と心は敏感になっているようにも思える・・・。

セイと付き合うまで・・・いや、セイと知り合うまでは恋なんてもの知らなくて、

ただ大好きなお姉さまと居られれば幸せだったというのに・・・いつの頃からかセイばかりを目で追っていた。

気がつけばセイを探して、セイを想って・・・ただの友人ではない距離に気付いたのは、セイの卒業間近で。

離れてしまうのが怖くて、大学という新しい場所に新しい友人達に盗られてしまうようで・・・。

セイへの想いとお姉さまへの想いは全く違うけれど、どちらも大切で失いたくなかったあの頃。

今ももちろん失いたくはないけれど、きっとセイなしではもう生きてはゆけない・・・そんな気がした・・・。

「祐巳ちゃん・・・怖い?」

ニヤリと笑うセイの口元に、いつもの意地悪さが見てとれる。

ユミは苦笑いしながら、セイのサラサラの前髪をかきあげ言った。

「私・・・セイさまのその笑い方・・・好き・・・」

昔は苦手だったこの笑顔も、今ではユミの中ではとてもお気に入り。

何か良からぬ事を企んだような笑顔も、照れたような困ったような笑い方も・・・とても好き・・・。

「私も・・・祐巳ちゃんのそういう顔好き」

苦い笑いをこぼす時、ユミは決まってほんの少し視線をそらす。

節目がちな視線の先の思想を、いつだって見てみたいと思っている。

セイはそう言ってユミの唇をふさぐように、深い口付けをした・・・。

「・・・んん・・・」

「・・・ん・・・はぁ・・・」

溜息なのか吐息なのかわからないような声がどちらともなく漏れる。

絡まる視線が熱を帯び、深く交わるのがわかる・・・。

「祐巳ちゃん・・・好きだよ・・・こんなにも好き・・・」

耳元で切なくそう呟くセイの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

セイはユミの髪を顔から払うと、額、頬、唇、首へとキスを移す。

ユミはくすぐったそうに笑みをこぼしながら、ふざけたようなセイのキスをただ楽しんでいるように見えた・・・。

優しく甘いキスを繰り返していくうちに、ユミの口元からは甘い声が漏れ、そのたびにピクンと身体を揺らす。

「・・・っ・・・ふぁ・・・」

「ねぇ・・・気持ちいい?」

セイの声に、ユミはただ頷くとギュっと固く瞳を閉じる。セイの手が頬を触れ、やがて首筋をなぞって・・・。

「あっ・・・っん・・・」

ユミはピクンと身体を震わせると、今しがた身体を駆け抜けた感覚に身を落とす。

そんな事にはお構いなしに、セイの手はゆっくりと丸く円を描くようにユミの胸に触れた。

「っは・・・せ・・・さま・・・」

「んん?何、祐巳ちゃん。どうかしたの?」

まだ余裕があるのだろうか・・・自分でもどうしようもないほど、今日は意地悪だ。

ユミの声にセイの中の何かが外れてしまったのか、それともユミがそう望んでいるのか・・・解らない。

セイはユミの胸の先の固いものを軽く指でつまんだ。

「あっ!・・・んぅ」

セイはユミの唇に自分の唇を重ね、奥深くまで舌を侵入させてゆく・・・。

すると、胸の先のそれはますます固さを増してゆく・・・。

ゆっくりとユミのジャケットを脱がし、キャミソールに手をかけるセイ。

下着を取り去り露になったユミの胸元に、セイはうっとりと口を寄せると強く強く吸い上げる・・・。

「・・・いっ・・・はぁ・・・っん・・・」

セイが吸い上げた跡には紫色の華が咲いたような痣が出来た。

それは、ユミがセイのモノであるという幸せへと変わる・・・。

妙な安堵感や支配感に頭の芯がボンヤリとしてきて、ユミは思わず涙をこぼした。

「どうして泣くの?そんなに痛かった?」

心配そうにセイは痕を撫でると、ごめんね、と呟いてユミのおでこにキスを落とす。

「ちがっ・・・」

ユミは一生懸命首を振ると、セイの首にしがみつくと言った。

「その・・・なんだか幸せで・・・うれしくて・・・だから痛かった訳じゃない・・・んです」

「そう・・・なら良かった。じゃあもっとつけていい?こことか・・・」

セイがそう言ってユミの首筋をなぞると、ユミは驚いたような顔をして慌てて首を押さえた。

「こ、ここはダメ!!ほ、他なら・・・構いませんけど・・・」

そう言ってポッと顔を赤らめるユミが妙に可愛いくて、セイは思わず噴出した。

「ん、わかった。じゃあこっちにする」

セイはそう言ってスカートをたくし上げ、足の付け根の辺りに唇を寄せさっきよりもずっと強く吸う。

「んんっ」

「声、聞かせてよ」

セイは手を滑らせ最後の下着をゆっくりと取って、ユミの一番敏感な部分へと手を滑り込ませた・・・。

「っっっ!!!」

さっきよりもずっと大きく身体を反らせたユミ・・・すでにユミの中心の部分は熱く・・・濡れている。

セイはゆっくりと味見するかのようにユミの中心を指でなぞり、指にまとわりつく甘い蜜を舌でペロリと舐めとった。

「・・・あ・・・やだ・・・聖さま・・・恥ずかしい・・・」

そんなセイの仕草に、ユミは両手で顔を覆って耳まで真っ赤にする。

「顔隠さないで・・・ちゃんと見せて・・・」

セイはそう言ってゆっくりとユミの身体に舌をはわし、太腿から内股へと手を滑らせてゆく。

絹みたいなスベスベの肌がとても心地よい・・・こんなベッドがもしあったなら、きっと起き上がれないだろうな・・・。

セイはそんな事を考えながらユミの身体のあちらこちらにキスを落とし、やがてユミの最も敏感な処に唇を近づけた。

「ああっぅ・・・っふ・・・んん」

ユミは身体をビクンと反らし、頭からつま先を駆け抜ける電流に身体を強張らせる。

ギュっと手に力を込めて、何かを握ろうとするが、生憎何も無い・・・。

と、そんなユミの手をセイはギュっと強く握ってくれた。

「っふ・・・ん・・・」

セイはユミの秘密の場所を、わざと音を立てながら舐める。

すると、まるでそれに応えるかのようにユミの中から蜜が溢れ出して・・・もう止まりそうになかった・・・。

「あっ・・・んんぅ・・・っく・・・」

何かがユミの頭の中一杯に広がって、何も考えられなくなって・・・。

頭の芯の辺りが霞みがかかったみたいにボンヤリとしてきたかと思うと、

やたらと耳につく水音がユミの羞恥心をさらに煽った。

「祐巳ちゃん・・・いい?」

セイの問いにユミはコクコクと頷くと、身体の緊張をさらに強める。

「こら、そんなに力入れちゃ入らないよ」

セイはそう言ってユミの足を優しく開かせると、中指をゆっくりとユミの中に滑り込ませた。

「っは!!んん・・・や・・・っあ!!!」

ユミはセイの手を強く握り、自分の中でセイが動くのを感じる。

初めはゆっくりと・・・傷つけまいと優しく・・・次第にユミの力が抜けてきた事を確認すると、

そのスピードを少しづつ上げてゆく・・・。

それに合わせるようにユミの腰は艶かしく動き、甘い声と、なんとも言えない香りが部屋の中に広がった。

「ねぇ・・・ゆ、みちゃん・・・あんまり力・・・入れないで・・・」

セイが動くたびにユミの中はギュっと締まり、その力は指が折れてしまいそうなほどで・・・。

「だ・・・だって・・・ぁん・・・っふ・・・」

セイはユミの濡れた瞳から溢れてくるものをそっと舌で舐めとると、ユミの唇を塞ぎ、いっそうスピードを速めた。

「あっ、あっ、っん・・・せ・・・さま・・・あ、あたし・・・もう・・・」

ユミはセイと繋いだ手に力を込めて、セイに懇願する。

すると、セイは小さく微笑みユミの一番敏感な部分に唇をうつした。

そしてユミの中心の蕾をゆっくりと優しく舐めながら指をいっそう激しく動かしてゆく・・・。

「・・・ん・・・んむ・・・っん・・・」

締め付けられる指に、後から後から溢れてくる蜜・・・セイの中の何かがはじけた。

セイはユミの蕾を強く吸い上げ、中をかき回す。そして・・・優しく蕾を噛んだその時・・・。

「あっ、んん!!あっああああああ・・・っく・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・祐巳ちゃん・・・?」

セイはユミと繋いだ手に微かな痛みを感じながらユミの顔を覗き込む。

グッタリと肩で息をするユミに、セイは切なそうに微笑みゆっくりと手を解く。

「うわ・・・どうりで痛いと思ったら・・・」

セイはユミがずっと握っていた手を見つめ、思わず苦い笑いをこぼした。

そこにはしっかりとユミが残した痕がついている・・・赤い・・・華の痕が・・・。

どれほどの力で握っていたのか、この痕を見ればどれほどにユミがセイに応えてくれていたのかが解る。

「ご、ごめんなさい聖さま・・・痛かった・・・でしょう?」

ようやく呼吸を整えたユミは、セイの手の甲についた跡を見て、申し訳なさそうな顔をしている。

「どうして謝るの?私は嬉しいよ・・・祐巳ちゃんがつけてくれた傷なら・・・ね」

セイはそう言ってまだボンヤリとしているユミの頬に軽くキスをすると、

そのままユミに覆いかぶさるように転がった。

「そろそろ温泉・・・行く?」

「はい!」

セイの声が耳元で聞こえる・・・甘い感覚にユミの身体がピクンと反応する・・・。

「それとも・・・まだしたい?」

そんなユミに、セイはまた意地悪な笑みを浮かべ、そう呟いた。





「もう!もう!!!信じられないっ!!」

「だ〜か〜ら〜ごめんってば!!だって、祐巳ちゃんが悪いんじゃない」

「なっ!?ど、どうしてです!?」

ユミはセイの顔を見上げると、腰を軽く叩いた。

あの後セイは結局二回もユミに迫り、ユミの腰がくだけてしまいそうなほど愛してくれた。

それはいい。それはいいが、何もあんな体勢で・・・。

ユミはさっきまでのことを思い出し、顔を真っ赤にした。

そんなユミを横目にセイはまだ、祐巳ちゃんが悪いんだもん、などと呟いている。

「どうして私が悪いんですかっ!」

ユミの質問に、セイは耳まで真っ赤にするとポツリと言った。

「だって・・・可愛いんだもん・・・祐巳ちゃん・・・だから私おかしくなっちゃうんじゃない!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ユミはセイの答えに顔を真っ赤にして俯く。ヒドイ言われようだと思う。

思うけれど、なんだろう・・・この暖かい気持ちは・・・。

ユミは胸のあたりを押さえると、鼓動の早さを確かめてみる。

すると、思ったとおり心臓はドキドキしてまるで早鐘のようだった・・・。

「とりあえずほら、温泉行こ?ね?」

セイはそう言ってユミの分の着替えの用意を持って、半ば無理矢理ユミの手を引っ張った。





浴場はそんなに広くはない。広くはないけれど、見晴らしがとても良かった。

ユミはさっさと服を脱ぎ終え、セイに断ると素早く浴場へと入っていってしまった。

「こんな時だけ素早いんだから・・・」

セイはノロノロと服を脱ぎ、キチンと畳んで籠に入れようやくユミの後を追う。

「あ、聖さま!!貸切ですよ!!」

ユミはセイの姿を見るなり嬉しそうにこちらに向かって手を振る。

「あ、ほんとだ。流石にこんなに遅くじゃ誰も入らないか」

時計はすでに12時を回っている・・・こんな時間に入ろうとするのはきっと貸切を狙ってくる人ばかりだろう。

セイはスポンジに泡を作って遊んでいるユミの元に駆け寄ろうとした・・・。

しかし・・・次の瞬間・・・セイとユミはその場で凍りついた・・・。

「な、な!!!!」

誰かが後ろからセイの事を抱きしめたのだ。

ユミも口をパクパクさせている・・・声を発したくても発せない・・・そんな感じだ。

セイが振り返ろうとしたその時・・・先に声を出したのは・・・相手の方。

「少し太った?私の時にはあんなに細かったのに・・・成長したわね、聖」

「!?」

この声は・・・多分・・・いや、間違いない・・・。

「おねえ・・・」

セイがそう言おうとしたその時、突然腕を誰かに掴まれ、お姉さまからグイっと引き離されてしまった。

見ると、腕を掴んだのはユミで、目に涙を一杯溜めている。

「ゆ、祐巳ちゃん?」

「せ、聖さまは私のなんです!!だから・・・他を当たってくださいっ!!!」

「ちょ、ちょっと祐巳ちゃん・・・これは・・・この人は私の・・・」

ユミは明らかに何かを勘違いしている・・・セイは誤解を解こうとしたが、またしてもセイより先にお姉さまが言った。

「あら、あなたは?悪いけれど聖を返す気はないわよ?」

セイはお姉さまの方を恐る恐る振り返り、その顔を見てガックリとうな垂れた。

・・・ダメだ・・・完全に楽しんでいる・・・。

「ダ、ダメですっ!!誰が何と言おうと聖さまは渡しませんっ!!!」

ユミはキッとお姉さまを睨みつけ、何とも嬉しい事を言ってくれる。

しかし・・・せっかくちゃんと紹介しようと思っていたのに・・・。

何故こうも絶妙のタイミングで現れるのだろう・・・この人は。

三人とも裸で、紹介しようにも気恥ずかしくて出来ないではないか。

セイは苦笑いを浮かべ、姉をチラリと見る。するとそれがかえってユミに誤解させてしまう。

「せ、聖さま・・・まさか本当にこの人と!?」

かろうじてせき止めていたダムが決壊するかのごとく、ユミの瞳から涙が溢れる。

「や、だから違うってば!!誤解だよ、祐巳ちゃん!!」

セイはユミを抱きしめながら、頭をよしよしと撫でる。

しかしお姉さまの方は・・・楽しそうに笑うだけで何も言ってはくれない・・・それどころか・・・。

「私の事・・・誰だか解ってるの?私はあなたの事聖から聞いてるけれど」

お姉さまはニッコリと笑うと、セイの髪を指ですく。

「っ!?」

ユミとお姉さまの間に目に見えない火花が散っている・・・セイはそう思った。

嬉しいんだけれど、どこか落ち着かない。

いつもはどちらかと言えばセイがやきもちを妬いていたから・・・。

「ほら、聖、こっちへいらっしゃい」

「ダメです!!聖さま行っちゃダメっ!!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

セイははぁぁ、と大きな溜息を落とし、この先待ち受けているであろう難関を思うと頭が痛くなってきた。



さて、どうしたものかな・・・。



セイはユミとお姉さまの両方の顔を見て、もういちど大きな溜息を落とした・・・。






愛しても愛しても足りない。


足掻いても足掻いても抜け出せない。


躊躇っても躊躇っても望んでしまう。


こんな心・・・イラナイ。


でも、こんな自分は・・・キライジャナイ。








今日のお題:聖さまの、さて、どうしたものかな・・・。です。

明日にはいけませんでしたが、祐巳ちゃんとお姉さまの初体面。

間に挟まれた聖さまは・・・?







幸せな日々   第八話